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●歌謡曲が聴こえる⑤再会 [books]

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前回のフランク永井の歌でカラオケでいまだにうたわれている歌ナンバーワンといえば「東京ナイトクラブ」でしょう。多分。

「東京ナイトクラブ」はごぞんじのとおりデュエット曲で、その相手は松尾和子。
フランク永井についてふれたので、同じビクター所属で同じ元ジャズシンガーの松尾和子にも。

まぁ、片岡義男の著書「歌謡曲が聴こえる」ではフランク永井に続いて松尾和子についても書かれていますので、引き続きということなのですが。
とにかく松尾和子もまた戦後の歌謡曲を語るうえで欠かせない歌手であることは、間違いありません。

「歌謡曲が聴こえる」の中でもフランク永井の「煙草」のようなヴァースで、松尾和子の話がはじまります。

それは著者・片岡義男が「ジャズと生きる」という本を読んだことが発端。

「ジャズと生きる」はわたしも以前読んだことがありますが、世界的ジャズピアニストであり作・編曲家でありバンドマスターでもある穐吉敏子の自伝。
日本ではじめてアメリカでのレコードデビューしたピアニストであり、かのバークリー音楽院で学んだはじめての日本人でもある。


「ジャズに生きる」は今年80歳を優にこえている彼女が60代のときに書いた自伝で、20代で単身アメリカに渡り、ジャズを極めようとする女性のある意味〝奮闘記〟ですが、彼女のアイドル、マイルス・デイヴィスをはじめ、バド・パウエル、オスカー・ピーターソン、ジョン・ルイスらトップジャズメンとのドラマチックな交流、またプロのジャズピアニストであるにもかかわらず、想像以上の経済的な困窮、さらには実感的人種差別、あるいは日本人ジャズメンとのギクシャクした関係など、とても読み応えがあり、かつ彼女の人となりが感じられるとても正直な自伝という感想を抱きました。

この本を読んだ後、片岡義男は穐吉敏子のレコードを現代から過去へと遡って聴くということを試みます。こまどり姉妹からはじまった歌謡曲もそうですが、その執拗なまでの探究心には感服します。
そして穐吉敏子のレコードで最後に聴いたのが1963年に発売された「魅惑のジャズ」という1枚。
それは「恋人よ我に帰れ」、「ラ・メール」、「枯葉」などのスタンダードからなるアルバムなのですが、1曲だけ聴き覚えのある歌謡曲が含まれているころに気づきます。それが吉田正のつくった「再会」

片岡義男は、その〝異曲〟が気になり、それならばオリジナルである松尾和子の「再会」を聴いてみようと思い立つのです。

そして中古レコード店で松尾和子のアルバムを買い求め、針をおとしたとき、1960年代が甦ったといいます。
当時の東京の喫茶店やバーでは、松尾和子のLPが〝必需品〟だったことを思い出すのです。

残念ながら遅れてきた〝歌謡曲ファン〟だったわたしは、喫茶店やバーで松尾和子の歌を聴いたことはありませんが、そうした〝近過去〟の光景は容易に想像できます。
とくにバーに流れる歌謡曲としてフランク永井ともども松尾和子のレコードはもってこいだったのではないでしょうか。

余計なことをつけ足せば、60年代も後半になると、「女の意地」、「赤坂の夜は更けて」、「ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー」など鈴木道明のメロディーがナイトライフの〝アクセサリー〟として加えられていきます。

片岡義男はフランク永井同様、松尾和子も高く評価しています。
だからこそ著書でとりあげたのでしょうが、抑制のきいた歌唱には品がある、と記しています。

それでは、フランク永井と似たような不幸せな最後だった松尾和子の3曲を。

まずは、とっかかりとなった「再会」

松尾和子もビクター所属で、この「再会」も作詞・作曲は佐伯孝夫・吉田正の黄金コンビ。
スローなワルツの吉田メロディーは哀愁たっぷりだし、松尾和子の歌唱は片岡義男がいうように、抑制がきいていて見事に〝待つ女〟を演じています。

そしてなによりも佐伯孝夫の歌詞がすばらしい。
「海より深い恋心」とか「鴎にもわかりはしない」とか「再び会える日 指折り数える ああ 指先に夕陽が沈む」など、ドラマチックなストーリーのなかに、当時としてはとてもインパクトの強いフレーズがちりばめられています。

片岡義男が聴いた松尾和子のベストアルバムの1曲目がその「再会」で、最後が「誰よりも君を愛す」だったとか。そして著者はこの「誰よりも君を愛す」が松尾和子の最高傑作だとしています。
なので2曲目はこの歌を。

これまた吉田正お得意の和製ブルースで、松尾和子は独特の〝ため息ヴォイス〟で歌のテーマを十二分に表現しています。
作詞は「月光仮面」の作者で近年亡くなった川内康範。
歌謡曲の作詞としては、ほかに「恍惚のブルース」「骨まで愛して」「伊勢佐木町ブルース」「花と蝶」「おふくろさん」などが。

歌は和田弘とマヒナスターズが女性ヴォーカルをフューチャするという、その後定着していく〝マヒナスタイル〟となっていて、「黒い花びら」に続く第二回の日本レコード大賞に選ばれています。

「再会」と「誰よりも君を愛す」は松尾和子のベストソングの双璧として妥当でしょう。では最後の、3番目の曲目は。

「お座敷小唄」や「銀座ブルース」もいい。どちらも「誰よりも……」同様マヒナとユニットを組んだ曲。
フランク永井とのデュオ、「東京ナイトクラブ」や「国道18号線」も捨てがたい。

カヴァーでも聞き入ってしまう曲がいくつもあります。
片岡義男が著書の中で頁をさいて書いていた「熱海ブルース」。オリジナルは昭和14年に由利あけみがうたっています。
ほかにも鈴木道明の「女の意地」、いずみたくの「ベッドで煙草を吸わないで」、平岡精二の「爪」なんかも。

そうした、歌もいいのですが、やっぱり最後は松尾和子の歌謡曲の原点ともいえるデビュー曲「グッド・ナイト」を。

やはり佐伯―吉田コンビの作品
「誰よりも君を愛す」と同じ和製ブルース調ですが、歌詞は佐伯孝夫にしては単調。
それでも
♪グッナイ グッナイ スイーハー グッナイ はあたらしかったし、
♪忘れられなくなっちゃった も印象的なフレーズでした。

片岡義男は「誰よりも君を愛す」がベストと書いていますが、わたしにとっての松尾和子はやっぱり「再会」。

その「再会」は高校時代のガールフレンドが教えてくれた歌で、ポップな感じの彼女と暗い歌との落差に意外な印象を受けたことを思い出します。
また、昔、ある用事で作詞をした佐伯孝夫の夫人と同席したことがありまして、そのときすでに佐伯孝夫は亡くなっていましたが、夫人が思い出話のなかで「再会」がいちばん好きだ、というようなことを話してくれたことも記憶の片隅にのこっています。

たぶん、「再会」は男性より女性のほうが好む歌なのかもしれません。


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MOMO

makimakiさんいつも読んでいただいてありがとうございます。
NHKマイルは12番からの3連複がひっかかりました、そこそこの人気どころの入線なのに思わぬ高配当に驚きました。
by MOMO (2015-05-13 16:29) 

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