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春の歌⑧惜春鳥 [noisy life]

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♪ 流れる春よ 夕空に夕空に
  願いし夢よ 想い出よ想い出よ
  清き命のささやきを 知るや入り日が消え残る
  あゝ青春の花散れば どこかで鳥が啼いている
(「惜春鳥」詞:木下恵介、曲:木下忠司、歌・若山彰、昭和34年)

春の歌もこれで最終回。

明るかった人にも、暗かった人にも同じように春は去っていきます。
そんな行く春を惜しんで「惜春鳥」

以前もとりあげましたが「惜春鳥」は昭和34年の同名映画の挿入歌。
映画は会津若松を舞台に、繰り広げられる若者たちの苦みのきいた青春ストーリー。監督は木下恵介
監督好みの、いまでいうイケメンたち。津川雅彦、石浜明、川津祐介、小坂一也、山本豊三が、大人になっていくことでいびつになっていく友情を熱演しています。

監督の嗜好を加味して、青年たちの関係にホモセクシュアルのにおいがすると指摘する評論家も。たしかに大学のラグビー部でもあるまいし、二十歳過ぎた男同士が肩組み合ったり握手したりと、現代ではあるまじき行為があちこちに。

しかし、それは深読浅慮。
当時はそういうことがまだ、さほど不自然ではなかった時代。
男女席を同じうせず、の戦前は男同士が肩を組むのは当然。女とは肩を組めなかったから
、まぁその代わりということもあったのでしょうが。
そんな、慣行が民主主義となり、男女の間が“急接近”していく戦後もまだ残っていたということ。
それに、いまだって同性同士の友情というのは多分に同性愛的要素を含んでいるのはあらためて言うまでもないでしょう。
ならば「惜春鳥」に特別なホモセクシュアルの関係を見ようとするのは“偏見”。

この映画でもうひとつ特筆しておきたいのは、十朱幸代の映画デビュー作ということ。そして、この映画がキッカケでその年、小坂一也と結婚(未入籍で15年後に別れる)したということ。特筆するほどでもないか。

歌はラストシーンをはじめ随所に流れていました。
上にあげたのは3番で、1番は♪青春の花咲けば 2番は♪青春の花薫れ そして3番の♪花散れば と青春の終わっていく様が叙情的に描かれています。

作詞・作曲の木下兄弟については、以前何度かふれましたので、ここではこの歌をうたった若山彰についてかんたんに。

昭和2年、広島県三原市出身。武蔵野音楽大学卒で、クラシックから流行歌への参入組。というか、昔はレコード会社がオーディションや、新人発掘のコンクールをするということがなく、音楽学校からレコード歌手をめざすものが多かったそうです。
クラシックからの挫折というより、はじめから流行歌をめざす者も少なくなかったとか。つまりクラシックの声楽を学ぶはずの音楽学校へゆくのが、流行歌手になる最短距離だったわけです。

若山彰も、そういう声楽の基本を学んでいるだけによく通るしっかりした歌声でした。そんな声質が活かされた大ヒット曲が昭和32年の「喜びも悲しみも幾年月」。やはり木下恵介監督の同名映画主題歌で作曲も弟の木下忠司。映画も大ヒットしその年のキネ旬ベスト3位に。おそらくその成功により、翌年の「惜春鳥」の主題歌もうたうことになったのでしょ。

とにかくその男性的な声で、勇壮なテーマの歌にはもってこい。そのため32年からはじまった日本の南極観測を題材にした「氷海越えて」や、しばらくあとから起こる軍歌のリバイバルブームでは「空の神兵」、「加藤隼隊の歌」などの軍歌、あるいはロシア民謡、さらにはプロ野球の巨人、阪神の球団応援歌にも起用されることになります。

私生活では昭和28年、やはり武蔵野音大出身でコロムビアレコードの後輩になる安藤まり子(「毬藻の唄」のヒットがある)と結婚。その後離婚。「喜びも~」の大ヒットでいわゆるナツメロ番組には欠かせない存在だったが平成10年病気で逝去。71歳でした。

「惜春鳥」は勇壮というよりはロシア民謡を思わせるような叙情的なメロディーであり、歌詞ですが、若山彰はそれをメリハリをきかせて歌い上げています。なかなかウェブの音源がなく、エムズの片割れさんのご厚意でリンクさせてもらいました。

ところで惜春鳥とはどんな鳥?

春告げ鳥といえば、一般的にはウグイスのことですが、「惜春鳥」と呼ばれる鳥は聞いたことがありません。木下恵介のネーミングでしょうか。
とにかく鳥はほとんど一年中鳴くわけでして、晩春だけ特別に鳴く鳥などいないでしょう。つまり「惜春鳥」とは聴く人のイメージで、どんな鳥でもいいのです。

森に住むコマドリ(駒鳥)は、その名の通り馬のいななきのような美しい声で鳴くそうです。晩春に聞けば「惜春鳥」と思えなくもありません。

「惜春鳥」といえば、もうひとつ知られた歌があります。
元天井桟敷の蘭妖子がうたう「惜春鳥」。
これは、寺山修二の詩「惜春鳥」にJ・A・シーザーが曲をつけたもの。その一節を紹介してみると、

姉が血を吐く 妹が火を吐く
謎の暗闇 壜を吐く
……

寺山修二監督の「田園に死す」では、あの有名な? 流し雛(五段飾りの雛壇がそのまま川を流れてくる)のシーンのBGMに使われていました。いまだったらギャグと受けとめられるかもしれませんが、監督いたってまじめです。

もちろん若山彰のうたった「惜春鳥」とはテーマもまるで別ですが、「田園に死す」は昭和49年の作。寺山が木下作品からタイトルを借用したのでしょう。

そういえば、フォーククルセダーズ「何のために」(昭和43年)ははじめ「惜春鳥」というタイトルだったとか。

「惜春鳥」というネーミングは、叙情的でかつインパクトのある言葉でした。

だいたい行く春を惜しむなどというのは、年をとった証拠なのかもしれません。
若い人たちに言わせれば、「惜春なんてとんでもない、夏が待ち遠しいくらい」なのかも。

そうかもしれない。わたしたちだって若い頃は、過ぎ去っていく春に見向きもしなかったものね。

それがいまじゃ一回一回の春の恵みが実感できて、まごまごしてると「来年もこの桜を見ることができるのだろうか……」なんて、黄昏れちゃったりして。

しかし、永遠の春を信じる“僕たち私たち”だって、それが確実に保証されたものかどうかは不確か。人災天災何かが起こって2008年の春、それが“最後の春”にならないとも限らないのですから。カア~ カア~ 

追伸

木下忠司ファン、および「ここは静かなり」のファンの皆様、YOU-TUBEに岡本敦郎の「ここは静かなり」をアップしましたので(音だけですが)、消されないうちにお聴きください。

momo 


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コメント 9

home-9(ほめく)

初めまして。
若山彰さんについて詳しく書かれているので、もしご存知でしたら教えて頂きたいのですが。
多分、映画「ここは静かなリ」の主題歌で、ウロ覚えですが、一番はこんな歌詞でした。
「はるばると雲が行く 青い空青い空
その空よりもなお高く 希望に燃える我ら若人
ああ青春の喜びを 声高らかに歌おうよ」
とても良い曲でしたが、今はどこにも記録が残されていないようです。
正確な歌詞をご存知でしたら、ご教示願えれば幸いです。
by home-9(ほめく) (2008-04-29 02:08) 

MOMO

せっかくの遠路のお運びすいません。

その映画も知りませんでしたし、とうぜん主題歌も知りません。

昔、リアルタイムで聴かれたのでしょうね。
わたしにもそうした昔聴いた“訪ね歌”の経験がありますが、ちょっとしたヒントでも藁にもすがる思いであたってみるのですよね。
ですからわたしのような所までいらっしゃったんだと思います。

お役に立てないで申しわけありませんが、なにかの機会で見聞するようなことがあれば、お知らせしたいと思っています。

またお訊ねの件が速やかに判明することを願っております。

by MOMO (2008-05-01 21:19) 

Yamashita Atsuko

はるばると雲が行く
青い空 青い空
その空よりもなお高く
希望に燃えた我ら若人
ああ青春のよろこびを
声高らかにうたおうよ

 と、雲が流れるのを見るたびに頭の中に
歌が響きます。いつ聞いたものか、どこで聞いたものか、
思い出せませんが、この歌詞の通りです。この部分だけが
頭の中で旋律を奏でるのです。
車を走らせていて、目の前に広がる空をゆったり雲が動く時。
山の中の露天風呂で、峰にかかる雲が流れるのをみるとき。
by Yamashita Atsuko (2009-09-12 23:49) 

MOMO

Yamashitaさん、はじめまして。

前にコメントをくださったhome-9さんと同じ歌ですね。
わたしはたぶん聴いたことがないと思うのですが、そんな同じ歌に心を魅かれる方がお二人もいらっしゃるとは。

ぜひその歌を聴いてみたくなりました。

home-9さんによると「ここは静かなり」という映画でうたわれていたとか。
調べてみますと、たしかに昭和31年封切の映画「ここは静かなり」がありました。そしてその音楽を担当していたのが、「惜春鳥」の木下忠司さん。
なおさら聴いてみたくなります。

ただこの映画の同名主題歌「ここは静かなり」は木下作品ではあっても、うたっているのが岡本敦郎。

その主題歌はCD化されていますが聴いたことがありません。機会があれば聴いてみたいと思いますが、おそらくYamashitaさんとhome-9さんの耳に残っている歌とは、書いていただいた歌詞からも違うような気がします。
当時の映画には主題歌のほか挿入歌がいくつもあったり(いい時代でした)で、そんな一曲なのかもしれません。

いつか新たな情報を知ることがありましたら、ブログに(まだ再開もしていないのに)書いてみたいと思います。




by MOMO (2009-09-18 00:48) 

KeiichiKoda

エムズの片割れさんのところで若山彰「惜春鳥」を聴かせていただいてからこちらにお邪魔しました。若山彰について詳しいですね。映画「惜春鳥」を見て以来、この映画の主題歌を歌う若山彰のファンで、当時は新聞のラジオ(歌謡)番組欄に若山彰の名前を見つけると、この歌を聴くためにラジオにスイッチをいれていたくらいです。我が家にはTVはなかったので、この年のNHK紅白でこの歌を歌う若山彰をラジオで聴いた記憶があります。映画「惜春鳥」には写真のように当時の松竹の「イケメン」俳優が出演していますね!津川はいまでも活躍していますが、鬼籍にはいった小坂一也は別としてほかの人たちどうしているのでしょうね?山本豊三などは当時たいへん人気があって、彼が主演する青春映画を何本か見ています。十朱幸代がこの後でる映画が「月見草」という映画で、山本豊三と共演していますね。この映画も私の青春時代の忘れられない映画の一つです。
by KeiichiKoda (2011-12-23 15:46) 

KeiichiKoda

若山彰が亡くなったのは1988年(昭和63年)とありますが、その10年後の1998年(平成10年)が正しいですね(ウィキペディアで調べました)。享年71歳!生年は昭和2年(1927年)とありますから、昭和63年では平そくが合いません(61歳で亡くなったことになってしまいます)。奇しくも、映画「惜春鳥」の木下恵介監督と同じ年に亡くなっていますね。1998年にはNHK衛星放送で木下恵介の追悼番組としてこの「惜春鳥」を放映しており、私も見ましたが、若山彰の追悼でもあったわけですね!
by KeiichiKoda (2011-12-26 08:36) 

MOMO

KeiichiKodaさん、はじめまして。

返事がおそくなってすみません。

「惜春鳥」のファンの方からのコメントはうれしいです。

わたしより大先輩ですね(たぶん)。

イケメン連のなかでは、ちょっとカゲのある役だった川津祐介がインパクトがありましたが、彼も最近みません。
山本豊三はネットでさえ消息不明。
どうしているんでしょうか。

また、若山彰の亡くなった年のご指摘ありがとうございました。さっそく訂正しておきました。

今後ともよろしくお願いいたいます。
by MOMO (2011-12-29 01:18) 

clcmvc

ここは静かなり、という白川握の小説を原作にした同名主題歌の歌詞ですが、正確には以下のようだと本にあります(全音歌謡曲全集6)。私も映画は見ていますが、でだしの有馬稲子のきれいさが印象に残っています。また、この主題歌もよく、いまでもくちずさんでいます。
4番までありますが、1、2番だけ。

はるばると 雲がゆく
青い空 青い空
その空よりも なお高く
希望にもえる われら若人
あヽ青春の よろこびを
声高らかに 歌おうよ

並木みち 吹きわたる
そよ風よ そよ風よ
その風よりも なお軽く
あしなにそろえ われら若人
あヽ青春の たのしさを
胸おどらせて 歌おうよ

by clcmvc (2012-01-14 22:24) 

MOMO

clcmvcさん、はじめまして。

そうでしたか、home-9さんが探していたのは「ここは静かなり」だったんですね、多分。

残念ながら音源を所持していないのですが、岡本敦郎のCDを試聴できるところがあったので、さっそく聴いてみました。

やっぱり木下メロディーですね。
そして驚いたのは、その歌がわたしの記憶の底の底に存在していたことです。

試聴なのでほんのさわりだけでしたが、とても懐かしい気分になりました。
もちろん、ノスタルジーあふれる木下メロディーなのですが、たしかに幼い頃聴いたことのあり旋律であり、歌詞だったと感じました。

もとはといえばhome-9さんのコメントからはじまったことですが、clcmvcさんのコメントで完結、それもハッピーエンドを迎えたようです。

多分、みなさんわたしより少し先輩の方々だと思うのですが、ありがとうございました。
岡本敦郎のCDは購入することにしました。
by MOMO (2012-01-14 23:17) 

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